【第2節 PTAの新たな役割への模索】父兄負担の解消方針明確化
1. 父兄負担の解消方針明確化
義務教育無償の教育行政制度の仕組みにもかかわらず、教育費の父母負担の現象はなかなか大幅に改善されずにきていた。
このため、地方財政法の改正により公教育に対しての住民への責任転嫁を禁止を明示することが課題となっていた。
(1)地財法改正
昭和35年(1960)4月、地方財政法の一部改正が行われ、「市町村は、法令の規定に基づき当該市町村の負担に属するものとされている経費で制令に定めるものについて、住民に対し、直接であると間接であつとを問わず、その負担を転嫁してはならない。」(27条の3)とされた。
同法施行令の改正により、政令に定める経費とは、「1.市町村の吏員その他の職員の給料その他の支給に要する経費 2.市町村の小学校及び中学校の建物の維持修繕に要する経費」であると明示された。
しかし、当時、公立小中学校経費のうち直接父母が負担した金額は、文部省の父母負担の教育費実態調査によれば、当時としては大変大きな額に上がっていた。
総額では203億円となり、うち半分近くの98億円がPTAからの支出とされる。
5:公立小中学校経費のうち直接の父母負担金額 | |
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PTAによる支出 | 89億円 |
学級費等による支出 (給食費・修学旅行費含まれず) |
86億円 |
その他の寄付による支出 | 28億円 |
計 | 203億円 |
こうした父母から直接学校に渡された経費は、学校職員の給与、維持管理費等、校舎建築・施設費のほか、最も多く(約7割)教育活動経費に支出されている。
表6:使途別父母負担額金額 | |
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学校職員の給与・手当等 | 18億円 |
維持管理費等 | 22億円 |
校舎建築・施設費(除く教具類) | 28億円 |
教育活動に要する経費 | 138億円 |
計 | 203億円 |
その教育活動費は、教材教具・図書費、消耗品費、行事への必要経費などであり、日常の教育に直接かかわるごく経営的な経費ばかりである。
表7:教育活動に要する経費内訳 | |
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教材教具・図書購入費 | 37億円 |
学校用消耗品購入費 | 44億円 |
学校行事等に要した経費 | 35億円 |
その他 | 22億円 |
計 | 138億円 |
こうした現状に対し、地方財政法改正の趣旨を実現するため、地方交付税措置の改善も行われた。
昭和35年度の地方財政計画では、基準財政需要額の積算において、市町村教育の適正化等に要する経費90億円が措置された。
この中には、小・中学校PTA寄付金の解消分64億円が含まれていた。
その内容は、小学校給食職員数の改善(2人分→3人分)、給与費の引き上げからなっていた。
また、この他、小・中学校の維持修繕等管理費の充実も措置されていた。
このことに伴って、昭和35年12月には、文部省体育局長から、都道府県教育委員会並びに知事にあてて通知が出され、
◇市町村学校職員である学校給食調理員の給与の一部又は全部をPTAが負担している場合には、速やかに公費負担へ切替えること
◇PTAに雇用されている職員については、市町村職員として、速やかに発令すること
を指導している。
しかし、実際の地方公共団体の教育費支出は、必ずしも必要十分なところまで改善されず、本格的な改善のためには、なおしばらくの年数がかかることとなった。