第1章 PTAの誕生と発展
第1章 PTAの誕生と発展

【第1節 PTAの誕生】文部省によるPTA設置の推奨

2. 文部省によるPTA設置の奨励

GHQ は、昭和21年(1946)秋(10月頃か)、文部省社会教育局にアメリカのPTA資料を提示し、日本におけるPTAの結成を指導した。これを受けて、昭和21年(1946)10月19日、文部省内に「父母と先生の会委員会」が設置された。「『父母と先生の会』の健全なる発達を促進する方法を研究審議し、その運営活動に必要なる参考資料を作成する」ことを目的と(委員会規約1条)に、父母、教育者、学識経験者及び文部省職員25人でもって組織された。また、文部省ではこの調査審議に並行して、関係者に対し、PTAの設置奨励を始めることになった。

(1) 父母と先生の会 ‐教育民主化の為に‐

昭和22年(1947)3月5日、文部省の「父母と先生の会委員会」は、「父母と先生の会‐教育民主化のために‐」と題するPTA結成の手引き書を作成し、全国都道府県知事にあてて文部事務次官名で送達された。

この中で,PTAの趣旨を、
「子供達が正しく健やかに育って行くには、家庭と学校と社会とが、その教育の責任をわけあい、力を合わせて子供達の幸福のために努力していくことが大切である。」
「ところが、現実での実状ではどういうことかというと、子供達に影響を与えるこの学校、家庭、社会という三つの場所がお互いに密接な連絡をもたず、みんなバラバラになっていることが多い。」
「今までも…父兄会とか、母姉会とか、後援会とか、保護者会とかが」あったが、 「それらの多くのものは学校設備や催しの寄付や後援をすることがその主な仕事であって、本当に子供たちのための仕事をすることが少なかった」ので、
「先生が中心となった会ではなく,先生と父母が平等な立場に立った新しい組織を作るのがよい。」
と説明して、会の作り方、運営の仕方、運営費の作り方、会の役割などを具体的に詳しく説明している。

例えば、会の作り方については、
「児童生徒に限らず,子供達の問題に関心を持っている人々が参加することは差し支えない」、
「完全に民主的な団体であるから」
「父母も、校長も、先生も、有力者も、平等の立場で会員として参加し、会の運営を民主的に進めていくことにするがよい。」とか、
運営については、
「政治的な色合いを持つとか、一宗一派の宗教的勢力に支配されるとか、身分地位や経済的な差別によって、色づけられてはならない。」
「営利を目的とする会でもない」などの点に 「十分留意すること」など、また、 運営費についても、会員の会費があまり高くならないように、バザー、手芸の講習、映画会開催などで経費を捻出することも考慮すべきなどとされている。

そして、会を作ることによる利益として、

  • 学校の設備が充実するようになる、
  • 義務教育を受けるべき子供が全部就学できるようになる、
  • 民主主義の教育が理解できるようになる、
  • 自分たちの知識や教育を身につけることができる、
  • 児童生徒を良い環境の中におくことができる、
  • 児童生徒の保護対策をたてる気運が生まれる、
  • 先生の生活を保護することに協力できる、
  • 先生から社会教育に協力してもらえるようになる、
  • 保健衛生の状況がよくなる、
  • 学校給食をうまく実施できる、
  • 学校が美しくなる、
  • 児童生徒のために学校以外での娯楽のプログラムを作れる、
  • 児童生徒の職業指導の役に立つ、
  • 父母と先生との間柄が親密になる、
  • 会員の相互が親しくなってお互いに助け合う気持ちが出てくる、

としており、多様な側面からPTAの可能性を挙げている。

このページのトップへ