第2章 PTA活動の定着
第2章 PTA活動の定着

【第2節 PTAの新たな役割への模索】社会教育団体をめざして

2. 社会教育団体をめざして

急激な設立・発展を遂げたPTA運動も、全国組織ができ、戦後の教育制度の創設に尽力し、教育条件の改善充実に努めてきて、学校教育費への公的負担の方向が明確になるにつれて、これまでの学校後援的な活動ばかりではなく、PTA本来の成人教育、両親教育、青少年教育などを進める社会教育団体としての活動を強力に推進すべきではないかとの活動についての反省、模索の時代に入る。

(1)成人教育全国研究大会

昭和36年(1961)2月宮城県鳴子町で日本PTA全国協議会は第1回成人教育全国研究大会を開催し、全国的に成人教育への取り組みを促そうとした。

また、同年5月、兵庫県明石市で開催された第1回児童生徒愛護活動全国研究大会にも参加している。
9 月には新潟市で開かれた第9回全国PTA全国研究大会でも、子供の幸福をテーマに、地域の社会環境整備、校外での生活指導のための活動などのついて盛んな議論が行われた。

また、当時、青少年による刃物の事件が続いたことから、中央青少年問題協議会の依頼に呼応して、「青少年に刃物を持たせない運動」を始めた。
このため、学校にはナイフを持っていかないこととしたため、クラスには鉛筆削り器が備えられるようになっていったとこともあった。

その後、交通事故の増大に伴って、子供たちの安全確保が社会問題になり、政府に、「交通安全国民会議」が昭和40年(1965)に設立されると、日本PTA全国協議会としてもそれに積極的に参加していった。

また、青少年の体力の低下が問題になって、「健康体力作り国民会議」が設立された際にもそれに参加するなど、他の関係団体と積極的な連携を図って、社会的な活動に努めるようになってきた。

(2)社会教育法改正による国庫補助

日本国憲法第89条は、公金その他の公の財産は、公の支配に属さない教育の事業には支出したり、利用させたりしてはならないと規定している。

民間の教育事業は、公の機関からの干渉を排して、事業者自身の創意と責任によって行われるべきものであるのに、財政的援助によって、公の機関が干渉を行う契機になりかねないこと、また、援助という美名において濫費がなされるおそれがあるということから、この規定が設けられたと考えられる。

このため、社会教育法には当初、国や地方公共団体が社会教育団体に補助することを禁止する規定が設けられていた。

このことは、社会教育団体が自主性を保つ上で意義は大きかったものの、一般に財政基盤の乏しい社会教育団体が多いことから、その活動を促進するという点では大きなネックになっていた。

ところが戦後の社会教育団体の社会的に有用な活動の展開の広がりの中で、団体に対する補助の必要性の認識が国民の中に高まってきていた。

これを受けて、憲法第89条に該当しない範囲内で国庫等による助成ができるように、昭和34 年(1959)4月、社会教育法の旧規定(13条)が改正された。
これにより、いわゆる教育の事業に該当しない、社会教育の普及奨励に関する事業や団体間の連絡調整などの事業については、国や地方公共団体からの助成が可能となった。

(3)社会教育関係団体補助金

文部省は、昭和35年(1960)度に、「社会教育問題団体補助金」を創設し、PTAを含む社会教育関係団体に対してその活動についての援助を始めた(この補助金は昭和53年(1978)度に「民間社会教育活動振興費補助金」に名称が変更され、現在に至っている)。

また、昭和52年(1977)度からはPTAによる地域づくりを推進するため「PTA地域活動」が始った。(この事業は、昭和52年度、57年度、62年度の変更ののち、平成3年に「値域社会教育活動総合事業」に統合されている。)さらに、昭和46年(1971)度には、PTA指導者の研修支援事業が始められ、現在は「社会教育研修支援事業」として継続してきている。

こうした国による団体や都道府県・市町村への補助事業は、都道府県・市町村によるPTAへの補助事業の契機となるとともに、社会教育団体としてのPTAの機能を発揮・向上させる重要な基盤となっていった。

また、昭和37年12月、PTAを財政面から援助して育成することを目的として、財団法人全国PTA協会が設立された。もともとは、日本PTA全国協議会の法人問題から発展して構想されたものであるが、行政ばかりでなく民間の中からも、PTAを財政的に支援することの必要が感じられたことの現れであろう。

PTA 自体がその運動を社会教育団体としての運動と再認識するとともに、行政による補助金の道が開けたこともあって、一層、社会教育団体としての役割・活動が意識され、強調されるようになっていった。

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